全部話し終えて完全に脱力している私の上から、


「お疲れさま」


みかの声が聞こえた。


「大変だったんだねぇ。
かりんは免疫ないから、相当ショックだったんじゃない?
相手が修ちゃんとはいえ、そういう接近戦、経験ないでしょ?
しかも、ファーストキスあげちゃうなんて…」

「接近戦て…。
まあ、正直、わかんないんだ。
そりゃ、ショックもあるけど、
ちょっとは修ちゃんに近づけたかなって、
嬉しいのもあるっていうか」


「へぇ、結構いい根性してるじゃん」


「だけど、ホントは全然、近づけてなんかなくて…、
たぶんあの時、修ちゃんは、
私じゃなくてもよかったんだと思う」


「かりん…」



自分で言ってて情けなくなってきちゃって、

泣きそうになるのを誤魔化すように立ち上がると、


「コラ」


と、Tシャツの裾をくいと引っ張られ


「泣くんだったら、今だよ。
ちゃーんと泣いとかないと、後々引きずるんだからね」

「えぇっ!」

「ホントだよ?失恋の達人が言ってるんだから、信じなさい」

「みか…」


せっかく我慢したのに、熱いものが喉の奥からこみ上げて来て。


「しょうがないな…。
私今日、昼からデートなんだけど、
付き合ったげるから」

「いいの?ヒロ君怒んない?」

「いいの、いいの!
かりんだって、いっつも付き合ってくれたじゃん?」

「あぁ、ヤケ酒ならぬヤケカラオケとか?」

「そうそう、ヤケマックとか」

「ふふっ。あった、あった!!」


こんなふうに泣きながら笑えてる自分が不思議だった。

だいたい泣くつもりなんて全然なかったのに、

泣きたいなんて、思ってもなかったのに…。

みかに言われるまで、気付きもしなかった。



「かりんはすぐ平気な顔しようとするからね。
ダメだよ、溜め込んじゃ!」



泣いたからなのか、ちゃんと全部話したからなのか、

みかが帰る頃には、私は信じられないくらい、すっきりした気分だった。

テーブルの上には、お笑いDVDが、散乱している。

みかのオススメを、二人で片っ端から見ていたのだ。

それらをきちんと積み上げながら、友達ってありがたいなって、

ホント心から、そう思った。