ようやく訪れたいつもと変わらない光景。

どうなることかと思ったけど、

そんなに色々聞かれなかったし。



気持ち切り替えて、ラグの上で参考書とにらめっこ。

うんうん唸っている私を、

椅子の背もたれを抱いた修ちゃんが見下ろしている。

ふいに視線を上げると、 目があった。


「ん?」


って目だけで聞いてくるから、

「何もないよ」って意味で、

首を振る。

これもいつものこと―、

なのに頬がカッと熱くなるのが触らなくてもわかる。


『なんで?』


さっきから、どうしても集中できない。

目の前に座る修ちゃんが気になる。


さっきの後遺症?


修ちゃんが視界に入るだけで、

Tシャツ越しに伝わってきた体温とか、

全身が包み込まれた感覚とか、

リアルすぎるほど蘇ってきて、

何にも考えられなくなっちゃうよー。

正直、さっきから、何も頭にはいって来ない。


「進んでるか?」


とうとう修ちゃんがそばまで来て、

私の右隣に座った。

進んでるわけないじゃない。

知ってるくせに。

のぞき込まれたノートには、

問題だけしか書かれてない。


「全っ然できてないじゃん」


頭突きと言うよりはずっと優しく、

修ちゃんの頭がコツンとぶつかる。


「どした?」


ゾクリ。

耳元で囁くような声に、体が震えた。

言えるわけない。

修ちゃんのこと考えてたなんて、

絶対、言えない。

いつの間にか修ちゃんの左手が、

私の背中の後ろにつかれてる。

顔が近すぎるように感じるのは、

気のせい?