あれ?

何がどうなってるの?


不思議そうに瞬きする私に、

修ちゃんも首を傾げてみせる。


「おまえがなかなか上がってこないからだろー。
何やってたんだ?」


半分呆れたような顔して聞かれても…、

何やってたんだろ。

そんなに長いこと

冷蔵庫の前で考え込んでたのかな?私。

修ちゃんが下に降りてこようとするくらいだもんね。


その上、ドアノブ強く握り過ぎて、

顔面を思い切り修ちゃんの胸にぶつけてるし。

ほんと、何してんだ、私。


自分で自分にダメ出ししながら、

うわあ、何これ!?

ようやく自分が修ちゃんの腕の中に、

スッポリと収まってることに気づく。


「あの、もう大丈夫だから」


慌ててもがいてみても、

どうにも抜け出せない。


「だから?」


知っててわざと聞いてくるこの性格の悪さ。

しかも、背中にまわった腕の力を

どんどん強くしてくるなんて、

どこまで意地が悪いんだろ。


苦しくて息ができなくて、

修ちゃんの胸を何度もぐぅで叩くけど、

それでも許してくれなくて、

もう私の体全部が、

修ちゃんに覆われて隠れてしまっている。

抵抗してもどうせかないっこないんだし、

暴れたら余計に遊ばれるだけだし。

どうせすぐ飽きるだろうからって、

されるがままになっていると、

修ちゃんは全然動かないし、何にも言わない。

それどころか、髪に頬をうずめるように、

上半身を傾けてくる。



いやいや、さすがにそれはマズイでしょ?

何で?何がどうなってそうなっちゃうわけ?

いくらなんでもやりすぎだよ。


「どーしちゃったの?あれ、修ちゃん?」


ふざけてるんでしょって、顔見て言いたくて、

体を離そうとするけど、させてくれない。

まるで見られたくないって言っているみたいに、

顔をあげることさえ許してはくれず。

口には出さないけど、


『何かあったのかな?』


表情もわからない状況で、

何を根拠にそう思うのか、

自分でもわからない。

それでも、

その手が救いを求めてるような気がして、

振りほどくなんてできなくて。


しょーがないなー。

もうちょっとだけ、このままでもいっか。


異常な接近状態に、

ほんとはドキドキして倒れそうなのに。

なんでかな、

逃げ出したりする気は起らなかった。

修ちゃんが話したくないなら、

聞かないでいよう。

ホントは聞きたいことだらけなのに、

聞けなかった。

こういうとき、

ものわかりいいフリしちゃう自分、

あんまり好きじゃないんだけどね。