「修ちゃん、レイナさん待ってるんじゃないの?

行かなくていいの?」



一番弱いところを突いてやると、



「おっと、そうだった。

俺らもう帰るんだけど、

乗せてってやったらって、レイナさんが。

優しいよなぁ」



おいおい、またおのろけ聞かそうって言うの?


「かりん、ラクだぞ、車は。

家の前まで送ってやるぞぉ。

どうする、どうする?」



畳みかけるように囁いてくる修ちゃんの顔。

うぅっ、私が即座に決められないことを見抜いて、

愉しんでる顔だ。

だって、早川だけ置いて帰るわけにはいかないし、

当然二人一緒に乗っけてもらうってことでしょ?

そんなの絶対やだよぉ。

この拷問がウチに着くまでずーっと続くなんて…。

しかも、レイナさんも一緒なんて、

二重の苦しみだわ。

断ろう、どんなに疲れ果てていても、

例え座れなかったとしても、

電車に揺られて帰った方がマシだ。



「修ちゃん、ごめん。やっぱりあたし…、」

「おい、望月?」



あーあ、帰って来ちゃった。

しかも最悪のタイミング。



「おぉ、ちょうどよかった!」



修ちゃんが待ってましたといわんばかりの勢いで、

早川の肩をグッと引き寄せた瞬間、

私は心の中で、終わったと思った。

あの嬉しそうな顔。

きっともう逃げられない…。

早川は何も知らないから、

修ちゃんに上手く丸め込まれて、

簡単に頷いちゃうに決まってるんだ。

この後に長くてしつこい尋問が、

待ち受けているとは、

夢にも思っていないんだろうから。