「何か食べたいなぁ。お腹空いた」

今度は別の方法で攻めてみる。

「おう。オレも腹減ったなぁ、そう言えば」

やった!ノってきた!

「泳ぐのってすっごくカロリー消費するって、

聞いたことあるけど、本当なんだねぇ」

ちょっと白々しかったかな?

でも早川には効果あったみたい。

「どうりで腹減るわけだよな。んじゃ、休憩しよっか」

「うん!」

よかったぁ!やっと、やっと陸に上がれるよ~。

こんなやり取りを何度か繰り返し、

私の体力はもう限界だった。


「もうムリ、お一人でどうぞ」

「なんだよ、だらしねぇなー」

「だってぇ、もう死んじゃうよ」

「しゃあねぇな。

 じゃ、あのブイまでラスト1本で帰ってくるから。」


部活じゃないんだから、ラスト1本って…。

心の中でツッコミをいれるのが精一杯。

レジャーシートにうつぶせに倒れ込み、

しばらく動けそうにない。

どれくらいそのままの体勢でいただろう。

じりじりと照りつける日差しがふいに遮られ、

背中にふわりと暖かい感触。

バスタオル、かけてくれた?


「ありがと」

「どういたしまして」


御礼を言おうと振り返った私の頬が、思わず引きつる。

だってそこに腕組みして立っていたのは、

早川ではなく修兄だったんだもの。