「手伝いましょうか、お嬢さん?」


パラソルの陰になって見えたのは、首から下だけ。

それでも差し出された手には、見覚えがあった。


「オス。何やってんの?こんなトコで」

「修ちゃん…」

「ナンパでもされにきたとか?」


ちょっと、それ、冗談にしてもヒドくない?


「え?あのね、あの、

 クラスの友達と一緒に来たんだけど、

 勉強ばっかしてても煮詰まっちゃうし、

 気分転換的な?」

なんで戻って来たの?

まさかさっき、修ちゃんも、私に気づいてた?

「ふーん。友達って、男か」

ニヤニヤしながら、

目線が早川の荷物を捉えてるのがわかった。

「う、うん。男の子もいるよ。

 みんなで来たから。

 修ちゃんだってそうなんでしょ。

 私見ちゃったんだから!

 よかったねぇ、レイナさん一緒でさ。
 
 ホントきれいな人だよねぇ。

 修ちゃんってば、鼻の下のばしちゃってさ」

話を修ちゃんの方に持ってくしか、逃げ道はない。

からかうなって怒られるかと思ったのに、


「だろ、だろ?ウソじゃなかっただろ?

 やっぱレイナさんは、

 かりんから見てもキレイなんだなぁ。

 そうかそうか…」

まるで自分の事みたいに、

威張って言う修ちゃんにかなりムカついて、

「はいはい、よかったね。

愛しのレイナさんが待ってるよ。

早く行きなよ!」

ホントはあんな人と一緒にいて欲しくないけど、

口が勝手に動いてしまうんだから、仕方ない。

あ、早川が帰って来ちゃったらどうしよう…。

急に思い出して、

遠くに見える焼きそばの列に一瞬目をやった。

どうやらしばらくは大丈夫みたいだけど。