「お腹空きすぎて、

 ちょっと気持ち悪くなっただけだよ。

 でも窓あけたら、すーっとした。

 何か元気出てきたみたい」

「よぉーし。んじゃ、泳ぐぞーっ!」

「その前になんか食べたいんですけど・・・」

「わかってるって!

 溺れられたりしたら、こっちが大変だからな。」

うぅ、憎たらしい、けどまあいいか。

やっといつもの会話ができた気がして、ほっとする。

ずっとギクシャクしてたのは、私が変に意識しすぎてたせいなんだ。

「普段通り」って、こういうことかと、

早川のさっきの言葉が、すんなり入ってきた。

もうちょっと言い方あるだろうって気もするけど、

まぁらしいと言えばらしいのかも。

憎まれ口叩きながらも、実は結構優しいヤツなのか?


海を前にしてじっと座っていられず、

ドアの前に立つ横顔から目が離せなかった。

キュンって胸がしめつけられて、

ずっと見ていたい気持ちがして、

もうそこまで海が近づいてるのに、

このままもうちょっと乗っていたいような。

さっきまで、あんなに海が待ち遠しかったのに。

自分でも呆れる。

でも、早川のこと、

なんとなく「好きなのかな?」ぐらいにしか思ってなかったのに、

どんどん意識し始めている自分がいる。

こんなに長い時間二人でいたのは、初めてだけど、

もっと聞きたい、もっと知りたいって思ってきて。

その気持ちに素直にならなきゃダメなんだ、きっと。

なぜか今日はそんなふうに前向きに思えた。

積極的にはなれなくても、後ろ向きになる必要ないよね?