「無理に連れてきて悪かったかな」


グサリ。

穏やかな口調だけれど、それがかえって胸に刺さった。

こんな言葉、言わせたいわけじゃないのに。

けど、困らせてるのは、ワタシなわけで。


「全然!平気平気。あたしも暇だし」


できるだけ元気に言ったつもりだけど、

嘘にしか聞こえなかっただろうな、今の。

もう言葉が続かない。

お願い、誰か助けて!


その時、早川が大きな声で叫んだ。

「おい、見えたぞ!ほら見ろよ!」

―――海だ!

流れていく木々の中に、キラキラ光る波のかけらがまぶしい。

それがだんだん大きくなにつれ、私達の声も大きくなっていく。



「すごぉい!きれーい!やったぁ!」


「だーから海のがいいって言っただろ!

うぉーっ、やっぱいいよなぁ!」


窓を大きく開けて、身を乗り出し、

私たちは子供のようにハシャイだ。


「お前、やっと笑ったな」


「え?」


「電車乗ってからずーっと、コワイ顔してるからさ」


「あ、うん」


言われなくてもわかってるっつーの。

こっちはそのコワイ顔と、

ガラス越しににらめっこしっぱなしだったんだから。


(あれ?よく考えたら、早川も、今やっと、笑った?)


アタシの緊張がうつっちゃってたのかなぁ…