私は返す言葉もなく、呆れていた。

だけど、修ちゃんは、そんなこと気にも留めずに、

早川の話をしている。


「いいヤツだよなー、アイツ」

「…まあ、ね」


へえ。

修ちゃんがそんなこと言うなんて意外。

わかる人にはわかるのかな。

あんな短い時間会っただけなのに。

そう思ったら、

ちょっと嬉しいような、くすぐったいような気持ちがして。

思わず緩んだ頬を押さえる。


「何ニヤケてんだよ!?」

「え?」


いきなり、修ちゃんが大きな声を出すから、

びっくりした。

からかっているようでいて、

声にどこか苛立ちが混じってる。

ふざけてるだけなのか、よくわからなくて戸惑ってると、

正面から両方のほっぺをむにっとつままれた。

それが思いのほか痛くって。


「いったーい!
何怒ってるの?わけわかんない!」


思わず、修ちゃんの手を払いのけて、両頬を押さえた。


「もう帰る」


拗ねてさっきの参考書に手を伸ばすと、


「きゃっ」


手首をがっしり修ちゃんに掴まれて、

引き寄せられた。