今、その話、したくないんですけど。


「花火の方って…。そんな言い方、」

「だって、名前知らないし~。
何?何て名前?」

「言いたくない。」

「んじゃ、花火クンで」

「もう、好きにしなよ」

「で?その花火クンがどうかした?」

「いや、その、あれは友達っていうか」


今、一瞬、話してみようかなって思った自分が恐ろしい。

いくらお姉ちゃんが百戦錬磨とはいえ、

相談相手にはふさわしくない。

根掘り葉掘り聞きだされて、

いいオモチャにされるのは目に見えている。


「そういえば修ちゃん、合宿行くらしいね。
なんか、お母さんたちがしゃべってるの聞いたんだ。
その間、おばさんも田舎に帰るからって、
『留守にするけどよろしく。』だってさ。
ウチはお盆っていっても、特に行く所ないもんねー」


ああ、海の帰りにそんな話してた気がするな。

もうすぐテニスサークルの合宿があるって、

レイナさんも言ってた。

その間は家庭教師もお休みかー。

さみしいどころか、ちょっとほっとしてる私。

今はちょっと、ゆっくり考えたい気分というか、

色々ありすぎて、頭の中、

一回整理したくなったのかもしれない。

だから、修ちゃんが合宿でちょうどよかった。

そんなことを考えていたら、携帯が着信を知らせる。


「宿題出しとくから、取りに来いよ。」


って、修ちゃんからの短いメールだった。