「わかってるつもりだったんだけどなー、私。
修ちゃんが、妹みたいにかわいがってくれてるの。
私だって、ずっとお兄ちゃんみたいに思ってきたし。
修ちゃんはモテるから、いっつも彼女いたけど、
今まで別に、なんとも思わなかったし」


自分で発した言葉に、「今まで」を改めて思い返していた。

なんとも思わないっていうのは、言いすぎかもしれないけど、

彼女の存在なんて、気にならなかったっていうのも事実。

実際、修ちゃんには、途切れることなく彼女がいたけれど、

私の前で、そんな話、ほとんどしなかったし。

でも、今回は最初から、何もかもが違ってて。

だからこっちも、調子狂っちゃったのかな…。


「レイナさんに恋してる修ちゃんは、
ちっとも幸せそうじゃなくて、苦しそうなんだ。
あんな修ちゃん、見たことないよ。
だから、私、何かできることないかなって思って。
でも、ホントは、もうヤメちゃえばいいのにって思ってるんだ。
結局、修ちゃんをレイナさんに取られるのがヤなだけなんだよね。
サイテーだよね。
修ちゃんの前ではいい顔して、
裏では全然違うこと考えてる。
もう、自分がどうしたいのかわかんないよ。」


全部言い終えたとき、私はもう笑えてなかった。

せっかく乾いた頬を、また涙で濡らしてしまいそうで、

慌てて上を向いた。


「そんなに自分を責める必要ないって。
好きな人が目の前で落ち込んでたら、
心配になるし、励ましたいって思うのは、
自然なことだろ?
どういう好きかなんてのは、この際どうだっていいよ。
修一さんは、お前にとって、大事な存在であることに、
変わりはないんだからさ。」


「大事な存在…」


「少なくとも、修一さんは、
お前のこと、すごく大事に想ってるんだと思う。
それは、お前の望む形ではないかもしれないけど」


私の望む形ってなんだろう。

今の早川の話だけで、十分な気がした。

私は私なりに、修ちゃんを想っていよう。

今まで積み重ねきたモノを、いきなりナシにするなんて、

どうせできないんだから。

時には、今日みたいに余計なこと言っちゃうかもだけど、

応援したり、心配したり、

それぐらいなら妹でも、許されるよね?