「おはよう。」

逆光で、その顔は良く見えなかった。

けれど私にはその声が誰だかわかってしまって、

そのまましばらく動けないでいた。

信号が青に変わっても。

この暑さの中、フリーズしたまま。


「行くぞ」


私の目の前を彼の背中が小さくなっていく。

私は慌ててペダルを踏んだ。

彼、早川孝は、

潤いのない私の高校生活の中における、

貴重な存在。

現在、気になる男の子第一位である。

サッカー部に所属していた彼は、

学期中に既に、かなり日に焼けていたけど、

今日久々に会って、

あまりの黒さに笑いそうになった。

だって歯だけがやたらと白くて。

この暑いのに毎日部活で後輩指導なんて、

信じらんない。

引退してるんだよ?

体動かさないと調子でないとか言ってるけど、

本当のとこどうなんだろ?

彼を好きなのかどうか、

そこはよくわかんないんだけど、

よくいるサッカー小僧のように、

髪を染めたり伸ばしたりしていないところに、

とりあえず好感もてた。