そういえば、電話かかってきたの、

ちょうど花火が始まるタイミングだった。

そもそも、いくら私が急かしたからって

1日でノート返しに来るなんて、

ちょっと不自然じゃない?

あれ、1日でやるの、結構大変だと思うし。

もしかして、最初から誘ってくれるつもりだった…?




いや、

それはいくらなんでも、自意識過剰だよね。




あんまりにも都合のいい解釈を、

慌てて軌道修正する。

だいたい、私なんかとこんなトコに来ちゃって、

誰かに見られたらとか、そういうこと気になんないのかな。

地元じゃ有名なイベントだし、この辺、

同じ学校のコだって住んでるし、

誰か一人くらい、会ってもおかしくない。

私なんて、一緒にいるとこ見つかったらと思うと、

イヤ~な汗が背中を伝うくらいなのに。



大丈夫。誰にも見られてない、見られない。



何度も自分に言い聞かせて、

気持ちが落ち着いてくると、

さっきからの果てしない妄想が、

急に恥ずかしくなって、

冷たいペットボトルで頬を冷やしながら戻った。

待ちくたびれた早川が、高いところから私を呼ぶ。


「望月!こっち!」


大きな声で名前を呼ばれて、思わずビクっとして、

周りを見回してしまう私とは対照的に、

早川は、そんなのカケラも気にしてないって感じで、

私を手招きしていた。