「今、外?」

「ううん。
家だけど、ちょっと、…取り込んでて」


チラリとお母さんの顔をチェックすると、

小さくウィンクを返された。


たぶん何かとんでもない勘違い、してるんだろうな。


後でなんて説明しようか、頭を悩ませていると、

ドーン!ドドーン!

遠くで太鼓のような音が二、三回響いた。


「お、始まったな!」

「あ、始まった!」


二人の声が重なる。


「お前ん家からだと、よく見えるだろうなぁ?」

「え?」

「おおっ、すっげぇ!今の見たか?」

「えーっ、見たいんだけどさー。
今、ここからは見えないんだよねー。」

「なんで?お前んちなら見えるだろ?」

「だって、今動けないんだもん」


って言い終えると同時に、

お母さんが私のお尻をポンと叩いた。

出来上がりの合図だ。


「ちょっと待って。もう動けるから!」


着付けてもらったばかりの裾をまくって、

階段を駆け上がり、ベランダに出ると、

所々欠けた花火が、いくつも空を染めていた。


「うわっ、見えた見えた!」

「おおっ、どーした?そのカッコ!」


楽しそうに聞いてくる声に、はっとして、

まさかと思いつつ玄関を見下ろすと、

ケータイ片手に門の前で手を振る人物発見。

一体そこでなにをやってるの?

また猛烈な勢いで、階段を駆け降りた。