玄関を開けると同時に、


「おかあさーん!」


家の中をドカドカ歩きまわり、お母さんを探した。


「おかあさーん、どーこー?」

「なあに?かりんなの?」


この声、ベランダからだ!

跳ぶように階段を駆け上る。


「浴衣着たいよ、浴衣―!」


「修ちゃんと出かけてたの?

今、電話あったわよ。」


「あ…、」


電話してくれたんだ、いつのまに?


「帰ったらお姉ちゃんしかいないから、
友達と花火見に行ったのかと思ってたわ」


「ん、…修ちゃんが奢ってやるって言うから、
お言葉に甘えてた」


「へぇ、いいわねぇ。
修ちゃんがバイトしてるのって、…コンビニだっけ?」

「そうそう、今日なんて忙しいんじゃない?」

「そうよねぇ。稼ぎ時だわねー」


花火大会なのに、バイトなんて、

修ちゃん、なんかかわいそう。

ホントは、行きたかったんじゃないのかな?

だから、余計に寂しかったのかも。

別れ際、修ちゃんが言ってた。


「今日は特にやる気が出ねー」


って、そういう意味だったの?