「甘いなー、これ。

なんか、辛いモン食いたくなってきたわ」



重苦しい流れを断ちきるように、

メニューに手を伸ばす。



「話、変えようとしてる?」

「あれ、わかった?」

「私じゃ話相手にもならない?」


修ちゃんは黙って首を振る。


「男は女みたいに、
1から10までしゃべったりしないものなの」

「いーじゃん、ケチ」

「あ、お前、ひょっとして、
人の不幸を面白がってる?ヒドイやつ!」

「そんなわけないじゃん!
心配してるんだよ、これでも。
なんか、…見てる方もツライよ」


矛盾しているかもしれないけど、

やっぱり修ちゃんが笑っててくれる方がいいって思うから。

一人で苦しんでるなら、話してほしいって、

そんなふうに考えてしまうのって、

私のわがままなのかな。


「言っとくけど、俺は絶対、
お前に相談なんかしないからな!」

「あのねぇ、いくら私が子供だって、
女ってことには変わりないんだからね!
修ちゃんなんかより、ずーっと女心わかってるんだからっ!」


きっと、強がってるだけ。
それはわかってるんだけど。


全然開かない心の扉を前にして、

自分のふがいなさについ言葉がキツくなる。


「だいたい修ちゃんは勝手なの!

話すのはイヤだけど、

一人でいるのもイヤなんてさ。

私を何だと思ってんの!?」



わかったようなセリフ、

ズバッと言ってしまって、はっとする。

だって、何にも言い返してこない。

それどころか、急にうつむいて、

黙り込んじゃうんだもん。