「今ね、二葉ちゃんに、彼氏とののろけ話を聞かされちゃったの」
――のろけ話!?
思わず紗枝さんを見たけれど、わざわざ否定するのもおかしな話。
それに、あんな話をしていたなんてこと、あっくんには言えるはずもないから。
「すごくラブラブなんだって」
「そうか」
あっくんはぶっきらぼうにひと言だけそう言うと、紗枝さんの肩にコートを掛けた。
「ねぇ、篤哉、今夜泊まっちゃダメ?」
紗枝さんがねだるようにあっくんを見上げる。
「……何言ってんだよ。客間なんてないから無理だ」
一瞬戸惑うような表情を浮かべたあっくんは、即座に拒否をした。
「篤哉の部屋でいいじゃない」
そう言って、紗枝さんがチラリと私を見たのを見逃さなかった。
ほんのちょっぴり含ませた、挑戦的な眼差し。