「妹、だもん」


自分に言い聞かせるつもりで、小さく呟いた。

もしも私たちが違う形で出会っていたら……。
何度そう夢見ただろう。
でも、兄と妹になってしまった以上、それとは違う関係を求めても、心が悲鳴を上げるだけ。
大人しく受け入れるしか術はない。


「なぁ、二葉……」


零れたビールを拭く手を止めて、あっくんが不意に私を見つめる。
抑え込もうとしても、速まる鼓動。

こんなに間近で、そんなに真顔で、何を言おうとしてるの……?

目から読み取ろうにも、逆に真っ白になっていく頭の中。


「俺、」


――ピンポーン
それは、まるで計ったかのようだった。

繋がりそうな糸を断ち切るかのように、あっくんの言葉を遮ってインターフォンが鳴らされた。


「……こんな時間に誰だ」


渋々という様子で、あっくんは立ち上がった。