それは……紗枝さんよりも?
そんな邪な考えが、つい浮かんでしまう。

急に真顔になった私をあっくんが覗き込むから、ちょっと後ろへ仰け反った。
その拍子に、缶ビールが軽快な音を響かせて床へと落ちる。


「――ご、ごめん」


慌てて屈み込んで、タオルで拭う。


「ビール片手に料理なんて」

「貸せ」

「え?」

「俺が拭くよ。まったく、手のかかるヤツだ」


私の手からタオルを取ると、いつもの呆れ顔でブツブツ言う。


「可愛い妹でしょう? 面倒をみるのは兄の役目だもん」


自分から『妹』なんて冠、被りたくないくせに、口を尖らせて反発してみせる。

それなのにあっくんが「妹、か」なんて、意味深に呟くから、もしかしたら、手が届くかもなんて思っちゃうじゃない。
独りよがりの妄想から抜け出せなくなるじゃない。

だけど、もう吹っ切らなきゃいけない。