「そういえば、相原さんが部長に抜擢されたのって、社長の強烈なプッシュがあったかららしいよ」

「そうなの?」


社長が人事に口を出すなんて、珍しいことだ。
普段は、異動関連も人員体制も、信頼しきっている人事部長に一任しているらしいのに。
よっぽど能力を買われているということなのか。


「でも、琴美、やけに詳しいわね」

「うん、池田くんに聞いたの。ほら、彼って人事部に同期がいるでしょ?」

「ふーん、そうなんだ」


からかうように見ると、「……何?」と琴美が警戒するように私から遠ざかる。


「池田くんと、すっかり仲良くなれたみたいだね」

「――や、やだなぁ、そんなんじゃないってば」


琴美は、照れて目を逸らした。


「この前の歓迎会の時だって、私を置き去りにするくらいだもんね」

「あの時はゴメンってば。とにかく、そうなんだって」