部長の部屋でロールキャベツを作った翌日のこと。
「おはようございます」
挨拶を交わしながらデスクに着くと、いつもはすでに出勤している部長の姿が見えなかった。
朝から誰かと打ち合わせかな。
そう思いつつ、ミーティングルームのほうに目を向けるけれど、誰も使っている様子はなかった。
「おはよ、二葉」
「おはよう。ね、部長は?」
私より早く出勤していたらしい琴美が、コーヒー片手に席に着いた。
「部長なら、出張だって」
「出張?」
夕べ、そんなことはひと言も言ってなかったのに。
何も言ってくれなかったことがちょっと寂しくて、妙に落ち込む。
「部長に何か用事?」
「あ、ううん。何もないよ」
慌てて笑顔で誤魔化した。