「それじゃ、私もお風呂に入って寝ようかな」


独り言のように呟いて階段を上がると、自分の部屋のドアを開けると同時に、隣にあるあっくんの部屋のドアが開いた。


「今帰りか」

「うん……」


私の思い違いかもしれないけれど、部長のマンションから朝帰りした日から、あっくんとはちょっとぎくしゃくしているような気がしてならなかった。
いつもなら冗談のひとつも飛ばし合うのに、ほかに言葉が続かなくて視線が彷徨う。


「新しい男、出来たのか?」

「えっ?」


唐突な質問に戸惑う。


「夕飯のときに、母さんがやけに嬉しそうに話してたから」


あっくんは目を細めて、少しだけ視線を彷徨わせる。


「あ……うん。今度は長続きしちゃうよ、きっと。ブルガリの時計も買ってもらえるかな」