そのうちのふたつを私が食べて、部長はお代わりを繰り返して六個全てを完食してしまった。
「ふぅ、大満足だ。ごちそうさま」
部長がお腹を抱えて椅子にもたれかかる。
握りこぶし大のものを六つも食べたのだ。
きっと、喉元までいっぱいに違いない。
「実は、男の人に作ってあげたのは初めてなんです」
「そうなのか?」
今度は興味深そうにテーブルへ身を乗り出してきた。
「それは光栄だな」
「ついでに言うと、合鍵をもらったのも初めてです」
彼氏は何人かいたけれど、そこまで深入りしたことはなかった。
いつだって、あっくんの身代わり。
寂しさを紛らわしてくれれば、それで良かったから。
でも、その寂しさが紛れたことは一度もなくて、それどころか愛しさが募るばかりだった。
「男は、相手の女の“最初”を欲しがって、女は、相手の男に“最後”を求める」