一気に頬の温度が上昇する。
ウブな女というわけでもないはずなのに。


「ま、俺の方も仕事が忙しくて構ってやれなかったけどね」

「いえっ、そんなことは……」


慌てて両手を振って否定する。
どんどん純情キャラになっていくのは気のせいか。


「稲森がいつ来てもいいように、牛乳だけは買い溜めしておいた」

「えっ……」


あの、たくさんの牛乳はそういうわけだったんだ。
部長の好物は牛乳。
勝手にそう思い込んでいたけれど、私のために買っておいてくれたなんて嬉しい。


「だから、これは稲森が持っててくれ」

「……はい」


カギを素直に受け取った。


「あの、部長……これからよろしくお願いします」


ペコリと頭を下げると、部長まで姿勢を正して「こちらこそ」と軽くお辞儀。