「……え? 二葉が料理? 一体何ごと?」


そこに書かれた分量と工程を見て、目を白黒させた。
だから隠したかったのに。
琴美も、私が料理をしないことは知っていたのだ。


「別に何でもないの。たまには作ってみようかなって思っただけ」

「えー?」


誤魔化したけれど、琴美の怪しむような目つきが変わることはなかった。

そうだ。
そこでふと思い立った。
料理のことならば、適任者がすぐそばにいたのだ。
トイレへ行く振りをして席を立った。


『ロールキャベツの作り方? 一体どういう風の吹き回し?』


お母さんが電話の向こうで驚きの第一声を上げる。
その反応は、琴美と似たり寄ったりだった。


「あ、うん……ちょっとね」

『分かった! 彼氏にでも作ってあげるんでしょう』


顔が見えなくても、その表情にからかいの色が滲んでいることは明白。
はしゃぐように問い掛ける。


「そんなんじゃないってば」


懸命に否定してみるけれど、『手料理=食べさせたい人がいる=彼氏』という簡単過ぎる連想ゲームを打ち破ることは出来そうにもなかった。