「……ごめん、変な話を聞かせたな。こんなこと、部下に話すことでもないのに」
フッと笑って、部長はホットミルクに口をつけた。
部長もあの夜、あの店で失恋したんだ……。
なんていう偶然。
他人事ではなかった。
「私もです」
今度は部長が、驚いて私を見る番だった。
「あの日、あの店で失恋しました」
言うつもりなんて、さらさらなかったはずが、誰にも話せなかった事実がポロリと口を吐いて出て来た。
「そうだったのか……」
部長は寂しそうに眉尻を下げた。
「でも、部長みたいに付き合っていたわけじゃないんですけどね。完全な片想い」
暗くしたくなくて、ヘラっと笑ってみせる。
そうすれば、落ちた気持ちだって上昇をし始めてくれる。
何とか自力で上を向いてくれるはずだから。