「いや、初めて行った。彼女に呼ばれてね」
彼女、いたんだ。
それなのに私を部屋に入れたりしていいの?
しかも、勝手に片づけなんてしようとして。
彼女とふたりでやろうと思っていただろうに。
「今となっては、“元”彼女だな」
「はい?」
「あの店で振られた」
……振られた?
部長が?
何て言ってあげたらいいのか分からなくて、部長の顔を見つめたまま黙ってしまった。
「やっとこっちに戻って来られたと思ったら、別れを切り出されたよ。他に好きな人が出来たって」
本社を離れてから、ずっと遠距離恋愛を続けてきたという部長。
早く戻りたい一心で、なりふり構わず仕事に打ち込んだことで、彼女の心が離れてしまった。
そう言って、寂し気に笑った。
歓迎会の席でどこか寂しそうな顔を覗かせたのは、そういう理由があったからなのだ。