「冷めないうちにどうぞ」
「あ、はい……」
言われて、立ち上がる。
三人掛けのソファ。
部長の隣にひとり分の隙間を空けて座った。
ふと見たテーブルに置かれたカップには、白い液体が入っていた。
「これ、何ですか?」
手に取りつつ聞いてみる。
「ホットミルク」
「ホット、ミルク……」
さっきから、意外なことだらけだ。
「もしかして、牛乳も飲めない?」
「いえ、違うんです。こういうのを出されたのは初めてだから」
否定しつつ、まじまじとカップの中を覗き込む。
コーヒーや紅茶じゃなかったら、てっきり日本茶だと思っていた。
「稲森は、家主泣かせの客人だな」