「あ……実は紅茶も苦手で……」
「珍しいね。それじゃ……」
部長は、そうだなと視線を浮かせて考え始めた。
上司に我儘を言っている場合じゃない。
「あの、すみません、何もいらないですから」
小刻みに手を振ってアピールするけれど、私の言っていることも耳に届かなかったらしい。
「あ、そうだ」
部長はポンと手を叩いて、そそくさとキッチンへ入ってしまった。
そこまで追いかけて拒否するのも躊躇われて、ソファの端っこに座ってみる。
改めて部屋を見渡すと、片付け途中のCDやDVDがディスプレイラックの横に積み上げられていた。
余計なお世話かもしれない。
でも、黙って座っているのも暇だし、手伝っちゃおうかな。
フローリングに座り込んだ。
CDはアーティスト別、映画のDVDは邦画と洋画とを分けて一枚ずつ収納していく。
意外だったのは、ラブストーリー系の映画が多いことだった。
こういうのも観るんだ。