まだ真新しい匂いのする部屋には、段ボールが積み上げられていた。
1LDKに、十段ほどの階段のついた中二階のある広い部屋だった。
その中二階には、書斎らしき本棚が見える。
ベージュの壁にベージュのカーテン、ダークブラウンで揃えられた家具類は、なかなか落ち着きのある素敵な雰囲気だ。
「なかなか荷物が片付かないんだ」
言いながら、部長は上着を脱いでネクタイを緩める。
一度、変なことを想像したせいか、骨ばった手先に男の色気みたいなものを感じてしまった。
つい、じっと見てしまってから、慌てて視線を逸らした。
……私、何してるんだろ。
小さく息を漏らす。
「適当なところに座って」
何か飲み物を出すからと、私に背を向けてキッチンの方へと行きかけて、「コーヒーでいい?」と背中越しに振り向いた。
「……すみません、コーヒー飲めないんです」
「じゃ、紅茶?」
部長が首を傾げる。