◇◇◇
部長の誘いにそのまま乗る形で連れて来られた場所で、タクシーから降りて建物を見上げた。
どこなんだろう。
まだ眠らない街とは対照的に、ひっそりと静まり返った住宅街だった。
「俺のマンション」
「……部長の?」
どうして部長の部屋なんて。
地上六階以上はありそうなグレーの建物を見上げた。
「心配するな。下心があるわけじゃない」
心を読み取られたらしい。
部長は、ちょっと不快に眉を潜めた。
「こんな時間じゃ、店だって開いてないだろう?」
「そう、ですよね……」
少しでも疑った自分が、逆に恥ずかしい。
肩をすくませた。
エレベーターに乗り込むと、このマンションが十階まであることが分かった。
部長の背中を追って六階で降り、開けられたドアに身体を滑り込ませる。