「そんな顔して見てたから」
「……そうですか?」
まあね、なんて部長が含ませた笑みを浮かべる。
今さら笑顔を向けてみても、その目は誤魔化せそうになかった。
「あの……私、お先に失礼します」
家に帰る気分ではないけれど、このままここにいるよりは、別の店でひとり飲んでいたい。
琴美は私がいなくても平気なようだし。
琴美と池田くんをチラリと振り返る。
私が個室から消えたことにも、きっと気づいていない。
「少し、話し相手をしてもらえない?」
立ち上がりかけた私のバッグを掴んで、部長が引き留めた。
「はい……?」
「他のみんなは、それぞれ話し込んでるみたいだしね」
なんで私が。
正直そう思ったものの、相手は上司。
露骨な態度と取るわけにもいかなくて、大人しく部長の隣に戻った。