「……あの時ぶつかったのって、部長だったんですか?」

「みたいだね」


あっくんにもらって大切にしていたのに、落としても気づかないでいたなんて……。
それは、気持ちと一緒に忘れろということなのかもしれない。

決して実を結ばない恋心は、持ち続けるほどに辛くなる。
溜息がひとつ、漏れて消えた。

もう、捨てようかな……。


「ありがとうございました」


一応お礼だけ告げ、そのままバッグへとしまい込んだ。


「付けないの?」


部長が不思議そうに問いかける。


「……いらないんです、もう」

「大切にしてるものじゃなかったの?」


思わず部長を見上げた。
心配そうな目をする部長と目が合う。

大切なんてレベルじゃない。
あっくんの分身とすら思っていたのだから。
それに気づかれてしまうなんて。