「うん、違うってば。ちょっと胃の調子が悪いだけなの」
必死に説得する。
今ここでばれるわけにはいかない。
「そうなの? それなら、明日にでも病院に行って来ないとダメよ?」
半ばホッとした顔でそう言うと、お母さんはダイニングへと戻って行った。
突き刺さるような視線を感じて、あっくんを見る。
嘘を見破られた……?
嫌な緊張が走る。
あっくんにだって、まだ知られるわけにはいかない。
だから、そんな風に真っ直ぐな目で見ないで。
視線を逸らして、あっくんの横を通り過ぎた。
どうか、気づきませんように。
念じながら二階の部屋に上がってドアを閉めると、ゆっくり近づく足音が聞こえた。
鼓動が速まる。
息を凝らして耳を澄ませると、それは私の部屋の前でピタリと止まった。
「二葉、入るぞ」
ドアから飛び退き、さも、くつろいでいたようにベッドに座った。
「……そんな顔して、どうかしたの?」