「平気」
その手をそっと払った途端、吐き気に襲われる。
……気持ち悪い。
何とか堪えようと生唾を何度も飲み込んでみたけれど、抑えきれなくなって、慌てて席を立った。
「二葉ちゃん!?」
トイレに籠ると、ドアの向こうから、お母さんの「大丈夫?」という声が何度も聞こえた。
胃の中の物を全部と言っていいほど出し切って、やっと収まった吐き気。
トイレから出ると、そこにはあっくんも立っていた。
「二葉ちゃん、もしかして……」
何を言いたいのか、その先の言葉は簡単に推測できた。
ずっと隠し通せるとは思っていなかった。
でも、今はまだ言えない。
「妊娠したと思った? やだなぁ、違うよ?」
思い切り笑い飛ばす。
「……本当?」
お母さんの目に疑いの色は滲んだままだ。