「――おいっ、大丈夫か!?」
部長が腕を掴んでくれたおかげで、路上に倒れることはどうにか免れた。
「すみません……」
言いながらも、まだ身体がふらつく。
部長に支えてもらわなければ、その場にすぐにでも倒れ込んでしまいそうだった。
「イヤかもしれないけど、少し部屋で休んでから帰ったほうがいい」
どうして部長は、ここまで優しいんだろう。
ひどい仕打ちをした私に、そんな言葉を掛けてくれるなんて。
でも今は、その言葉に甘えさせてもらうしかなかった。
部長は私の身体を横から支えるようして肩を抱きながら、部屋へと連れて行ってくれた。
ここをもう一度訪れることになるなんて、思いもしていなかった。
中へ入った瞬間、これまでのことが思い出されていく。
初めて料理を作った夜のこと。
“二葉”のキーホルダーと一緒に、部長の名前をくれたこと。
眠り込んでいた私を見て、優しい笑顔を向けてくれたこと。
全部、愛しい思い出だった。
部長は私をソファへ横にさせると、毛布をかけてくれた。
避ける隙もなく伸ばされてきた手。