悲しみを浮かべた目で、私の言葉を待つ部長。

……私、何してるんだろう。
部長を引き留めて、どうするつもり?


「……何かあったのか?」

「あ、いえ、その……」


――そうだ。
バッグの中を漁り、目の前に差し出した。


「これ……」


それは、ずっと返しそびれていた部長の部屋の合鍵だった。

これを返してしまえば、ふたりの間には何ひとつなくなる。
指先が震えるのを止めることはできなかった。

躊躇いがちに部長が手を伸ばしてくる。
その手の平にそっと置くと、部長はその鍵をしばらく見つめた。
苦しくて、苦しくて、その場に足元から崩れてしまいそうだった。


「帰り、ひとりで平気か?」

「……はい、大丈夫です」


そう返事をしたところで突然眩暈に襲われ、立っていることができなくて、その場にしゃがみ込んでしまった。