「嘘ばっかり。あんなに幸せそうな顔してたじゃない」


琴美に言われて、部長との楽しかった時間を思い出してしまった。
油断すると、涙が溢れそうになる。
部長の温もりを思い出して、恋しさに身体中が震える。
けれど、ここで怯んでいたらいけない。


「その人にね、想いが通じたの」


精一杯、声を弾ませる。

嬉しくて仕方がない。
部長とのことは、もう過去の話。
私には今の幸せがあれば、他のことはどうでもいいの。
そういう顔を作ってみせた。


「それに、私も本社に戻れてよかったし」

「そんな……ひどいよ、二葉。部長とのことは、そんな簡単なことだったの?」


琴美は目を吊り上げて怒り出した。
正義感の強い彼女らしい。

……ごめんね、琴美。
それほどまでに私たちのことを応援してくれていたのだと、初めて知った。
でも、もうどうしようもないこと。


「簡単というか、……通り雨みたいなものよ。たまたま出会って関係を持ったけれど、それは一時のもので」