「それにしても、あの歳で部長に抜擢されるなんて、相原さん、かなりのやり手なんだろうね」

「そうだね」


うちの部署が、課から部へと編成変えされたことをきっかけに、新たに部長として迎えられたのが相原部長だった。

三十歳での大抜擢。
大企業では相当珍しいことだと思う。
下に就く課長のほうが五年近く先輩だ。
部長の中でも群を抜く若さと言える。

ということは、相当厳しい目で部下のことも見るのかもしれない。
優しい仮面を被った鬼ということも考えられる。
そんなことを考えているうちに、なんとなく憂鬱になってきた。


「たまには同僚と飲むのもいいと思うよ?」


話を歓迎会に戻す琴美。
ね? と目を見開いて、私の顔を覗き込んだ。


「それに、二葉が来ないと私が寂しい」


今度は、可愛らしくおねだりだ。


「どうして?」

「だって、うちの部署、女子は三人だけで、残りのひとりは江梨花(えりか)さんでしょう?」


私たちとは十歳も離れた、何ごとにも厳しいお局様だ。


「私が行かなければ、琴美ひとりで紅一点みたいなものじゃない」

「だから、それじゃ寂しいって言ってるの」


お願いだからと何度も懇願されて、仕方なく頷いたのだった。