「またあっくんと?」


名前を出された途端、胸が軋んだ。
普段から私があっくんの話題を出すものだから、琴美の口からその名前が出てくることは、ごく自然なことだった。


「またってほど一緒にいるわけじゃないよ」


ほかの兄妹を知らないから何とも言えないけれど、ごく普通の距離感だと思う。
そこに血の繋がりがないということ以外は。


「二葉はブラコンだからなぁ」

「なによ、そんなんじゃないってば」

「まあね、あのお兄さんみたいな人が近くにいたんじゃ、ほかの男どもが霞んじゃうのは分かるけどね」


琴美はひとりで納得したように、うんうんと頷く。

“ブラコン”。
そのひと言でこの気持ちを片づけられたら、どれだけ楽だろうといつも思う。

でも、ほかの男の人に全然目がいかないというわけでもない。
ただ結局最後は、あっくん以上に想える人がいないということに気づくだけ。
そんな“気づき’’、もう何度繰り返してきただろう。