倉庫に異動になって、一ヶ月が過ぎようとしていた。

会社の吹き溜まりだと言われている職場の割に仕事はそれなりにあって、スタッフも能力の低い人の集まりというわけではないことが判明した。

昔はやり手だったらしい菊池部長も、普段はおっとりとした態度で働いているけれど、納品ミスや配送のトラブルがあったときには、キレ者らしい俊敏な対応であっという間に話をまとめてしまうのだから。
妙な偏見は、すっかりなくなってしまっていた。


「はい、菊池部長、コーヒー淹れました」


午後三時。
椅子にゆったりと腰をかけながらパソコン画面に見入っている部長のデスクへ、トンとカップを置いた。

いつもなら、「はーいはい、ありがとね」と言って片手を上げる菊池部長が、やけに神妙な顔つきで、私がコーヒーを置いたことにも気づいていないようだった。


「一体どういうことなんだ……?」


部長がポツリとひと言漏らす。


「どうかしたんですか?」

「……いや。こんな僕のところにも、管理職の人事異動の知らせくらいは届くんだ」