どこかで予感していたのに、そんな予防線は簡単に壊されてしまった。


「でも、それは出来ないと断ったよ」

「え……?」


落ちるところまで落ちた私に、一筋の光が射し込む。


「だって、俺には二葉がいるから」


そっと引き寄せ、耳元で部長が囁く。


「……社長に背いて平気なんですか?」

「恋愛は、社長には関係のないことだろ?」


私にゆっくり諭す。

それはそうだけど……。
そんなことをして、部長の仕事に支障は出ないんだろうか。
キレ者の菊池部長を窓際へ追いやるような人だ。
そんな人が、大事な娘との縁談を蹴る相原部長を野放しにしておくとはどうしても思えない。
別の不安が胸に広がる。


「社長と会うって言っていた夜、一緒にいた女性がそうですか?」

「……見たのか?」


慌てて私を引き剥がす部長。