◇◇◇
「電気もつけないで、どうしたんだ?」
勝手にあがりこんだ部長の部屋。
点けられた電気で部屋がパッと明るくなる。
帰って来た部長は、コートを脱ぎながら驚いた顔で私を見た。
「来るなら連絡くれればよかったのに」
そうしていたら、もっと早く帰って来てくれた?
壁掛け時計が指示していたのは、午後十時をとうに回った時間だった。
もしかして、今夜もこの前の女性と一緒だったの?
浮かぶのは疑念ばかり。
「二葉? どうかしたのか?」
何も答えない私の隣に、部長は腰を下ろした。
「……誰かと一緒だったんですか?」
「仕事だよ? プロジェクトの進行がちょっと遅れててね。それより、何かあったのか?」
部長が私の顔を覗き込む。
その目をじっと見つめても、逸らされることはなかった。