そして、その日はあっという間に訪れた。

第一倉庫への初めての出勤日。
そこは、本社からは電車を乗り継いで二十分のところにある。
私のアパート、本社と倉庫は、ちょうど三角形で結んだような位置関係だ。
通勤時間にすると、それほど変わりなかったことは救いだった。

近代的な高層の本社ビルとは違って、一階のみのだだっ広い建物。
数台のトラックが入っては出て行くのが見える。
倉庫というだけあって、物流の拠点になっているのだ。


「おはようございます……」


小さな事務所のドアをそっと開けて中へ入ると、ちょうど向かいに座っていた年配の男性と目が合った。


「……どちら様かな?」


穏やかな優しい口調で問い掛ける。


「今日からこちらでお世話になることになりました、稲森二葉です」

「はて……」


その人は首をゆっくりと傾げて、目を瞬かせた。

……私がここへ来ること、話が通ってないの?