「……何かあった?」


私の表情や声に、一瞬の変化も見逃さない。
部長は、心配そうに私の顔を覗き込んだ。


「あの……部長が以前付き合っていた女性って、ストレートの長い髪で私よりも小柄な感じですか?」

「え……?」


突然の妙な質問に、部長は目を見開いた。

私に部長と別れてほしいと言う人なんて、他に思い浮かばない。
もしかしたら、元カノが部長とやり直したくて、私に別れを迫ったんじゃないか。
それは、カーテンの隙間から太陽が差し込んだベッドの上で、私が達した結論だった。


「あ、ごめんなさい、変なことを聞いて」

「……まぁ、髪の毛は長かったけれど。……それがどうかした?」

「夕べ――」


言いかけたところで、チンという音と共にエレベーターが止まる。


「よう、相原、仕事は順調か?」


数人が乗り込んで来てしまった。
部長は私のことを気にしながら視線を流しつつも、それ以上話すことはできなくて、そのまま目的のフロアに到着した。