破れかぶれで『好き』なんて言って、あっくんを惑わせてしまったのだから。
結婚を目前に控えたあっくんに、紗枝さんを引き合いに出して自分の気持ちをぶつけるなんて。


「……でも、あの言葉に嘘はなかったの。あっくんのこと、本当に好きだった。だけど、私たちはやっぱり兄と妹なんだよね……」


それは覆りようもない事実。
だから、キスを交わしても、虚しさと大きな罪悪感しか生み出せなかった。
幸せを感じることは、何ひとつなかった。


「この前の部長さんが好きなんだろ?」


優しい顔だった。
兄としての顔。

コクンと頷くと、あっくんは私の頭をくしゃっと撫でた。


「……俺もね、ずっと昔から二葉のことが好きだったんだ」

「えっ……」

「突然出来た妹が可愛くて仕方なくてさ。でも、急に出来た兄と妹の関係だったから、その感情が妹に対するものなのか、異性に対するものなのか、自分でもよく分からなくて。でも、この前、気づいたよ。妹への過剰な愛情だって」


そう言って、優しく笑い掛ける。

あっくんも、私と同じことに気づいたのだ。
同じように感じていたのだ。