「……いや、鎌を掛けただけだったんだけど……まさか本当にそうだったなんて」
琴美は目を白黒させた。
それじゃ、私はまんまとその手に引っ掛かったということ……?
ガックリと項垂れた。
同じ職場、しかも同じ部署に恋人がいたのでは周りは仕事がやりにくい。
出来れば、内緒のままでいたかったのに。
「へぇ、相原部長と二葉がねぇ……」
何度も首を捻って、どうも納得していない様子だ。
私自身もこうなるとは思ってもいなかったから、琴美がそう思うのも当然かもしれない。
「でも、いつからなの?」
「……実は、部長が異動してきた日」
「えっ……それじゃ、歓迎会をやったとき?」
さすがにそれには驚いたらしい。
何たる早業。
そんなことを呟いて、琴美は「へぇ」と繰り返し首を小刻みに振ったのだった。