「何も聞かないんですか?」
「二葉がどうしてこんなところにいたのかってこと?」
頷くと、「話したい?」と逆に質問で返された。
どうしてかと聞かれたところで、正直に話せることじゃない。
形だけとはいえ、彼氏である部長への背徳行為。
それを包み隠さず話せないのは、部長への想いが大きくなったからなのかもしれない。
部長に愛想を尽かされたくない。
誰かに寄り添っていたいからという理由じゃない。
部長に嫌われたくなかった。
言葉に詰まっている私に、「それなら無理に話させたくない」と、部長は優しく微笑んだ。
どうして、そこまで優しくしてくれるの?
それは、私にそれほど興味がないから?
持て余した時間を一緒に過ごすために始まった私たち。
気づけば、私ひとりが部長の出方に戸惑って、心を揺らせて、すっかり心を奪われてしまった。
部長は?
部長はまだ、昔の彼女を引きずってるのかな。
それとも、その心に少しでも私の存在はあるのかな。
真っ直ぐ前を見る部長の横顔をそっと眺めた。