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マスターにお礼を告げて、私たちは喫茶店を後にした。
久しぶりに海をのんびり散歩したい。
そう言う部長に手を引かれて、夕べとは違う光景を見せる浜辺を並んで歩いた。
誰もいない冬の海。
遠くに漁船なのか、二,三浮かんでいる以外、青い海を邪魔するものは何ひとつなかった。
「どうやってここに辿り着いたんですか?」
喫茶店の名前と電話番号だけだなんて。
「二葉のいるところは、どこだって分かるんだ」
得意気に言った。
胸の奥がジンと熱かった。
くすぐったい言葉にうろたえる私を見て、部長が笑う。
「なーんてね。電話番号さえ分かれば、あとはナビが連れて来てくれるから」
夕べは残業で遅かったはず。
のんびり過ごしたいはずの土曜日の朝に、こんな遠くまで呼び出されて、疲れた顔のひとつも見せない。
その上、ここに私がいることの理由も問いたださないなんて。