「……遠いところです」
あまりにも部長から離れ過ぎてしまった。
自分が招いたことなのに、それでも、どうしても……。
「部長……会いたい」
『すぐに行くから。場所を教えてくれ』
目の前に置き去りにされたメニュー表が目に付いた。
「……Sea sideっていう喫茶店です」
『どこにある?』
……ここ、どこ?
窓の外を見ても、海以外に目印になるようなものなんてない。
それは、部長と私の繋がりを切ろうという天からの裁きのようにすら思えた。
『電話番号は?』
もう一度メニュー表を見て、番号を告げる。
『すぐに行くから。いいか? そこでちゃんと待ってるんだぞ。絶対に動くな』
何度も念を押すようにして、部長は電話を切ったのだった。